« 嘘を事実と思い、事実を嘘と思う | Main | ブログを書いている横で »

2012.03.06

経営者という病

2012
『私、社長ではなくなりました』安田佳生著/プレジデント社

「オフイスにカフェバーやワインセラーがあって自由に使える、さらには専属のパティシエがいてお菓子を焼いてくれる」


6年くらい前でしたでしょうかね、採用コンサルティングのワイキューブ社の記事を見かけて「へええ、すんげえ会社があるなあ」と思ったのは。


その時は知らなかったのですが、「2年目以上の社員は出張でグリーン車に乗れる」だとか「平均年齢26歳で750万円の平均月収」だとかさまざまな福利厚生があったようです。


同業者でもないし、「きっと儲かっているんだろうな」くらいにしか思ってなかったんですが、内情はある時期から借金まみれだったようですね。


この本は、去年の3月に民事再生法を適用されてしまったワイキューブ、その創業者である安田佳生さんの自省録です。


「経営者が自社の倒産について語る」ってのはよくあるテーマの本です。


けど、この本が他の著者の関連本と違うのは「経営者のコンプレックス」に光を当てている部分でしょう。


おしゃれな受付のある会社を訪問するたび、受付のない自分の会社を引け目に感じていた。そういう劣等感を、そのままにしておくことができなかった。ひとつひとつ克服していかないと気がすまなかったのだ。


私はビジネスで成功したかったというよりも、立派な受付のある会社の社長になりたかっただけなのかもしれなかった。大きなビルや立派な受付に対する劣等感を克服することが、私にとっての目的になっていた。(P79)


この手のくだりが随所にでてきます。


で、社員に対して行っていることの多くに、「社員から嫌われたくないという意識の存在」がどこかにあるんじゃないかなってことに読み進んでいくと気がつきます。


で、著者もそのことを自覚しています。


会社は寂しさを埋めるところではなく、仕事をするところなのだ。そんなことはわかっている。だが、我慢できなかった。会社は仕事をするための場所なのだと、割り切る事ができなかった。(あとがき)


会社にはその経営者が持つ「コンプレックス」が色濃く反映されることが多いようです。


「とにかく、いい暮らしがしたい」、「とにかく、いい場所にオフイスをつくりたい」、「とにかく、社員にとっていい会社でありたい」•••


これら「とにかく」って意識は、何らかのコンプレックスの現れである場合が多い。


コンプレックスは何かを行う上でのエネルギーでもあるから、それを否定したり、なくそうとする必要はない。


問題となるのは、コンプレックスに経営者自身が無自覚に操作されてしまうことなのでしょう。


コンプレックスが満たされないと渇望をします。で、渇望は無理を生みます。無理は多くの場合、経営をダメにしていきます。


そんな示唆に富んだいい本でした。


けど、万人には受けなさそな本かもな•••。

March 6, 2012 |

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 経営者という病:

Comments

Post a comment