僕と同じ時代を生きている方であれば、ほとんどは目にしたであるだろう。『少年ジャンプ』などに乗っていた肉体改造マシーン(?)の広告を。
「誰でも簡単に」
「NASAの宇宙飛行士も愛用」
「わずか1日5分で」
「テレビを見ながら寝たままで」
などの広告コピーには、「今のままのあなたではダメですよ」という潜在メッセージが込められている。「そんなんじゃ女の子が見向きもしませんよ」という強迫観念(?)を間接的に与える効果がある。
内なるコンプレックスを刺激され、「強くなりたいけど努力はしたくないなあ〜」と僕は商品に飛びつきまくった。
1ヶ月の小遣いが2,000円だとか3,000円だとかの時代、だ。そんな中で、僕はお年玉の全額をはたいたり、お使いのおつりをごまかしたりして、次々と商品を購入した。みっともないが、ここで一部をカミングアウトしてみよう。
●アポロエクセサイザー(16,800円くらい)
NASAが開発したという全身の筋肉を鍛えるマシーン(実際は安っぽい荒縄みたいなものでできている)。確か箱にはスペースシャトルの絵が書いてあった、かな。車田正美のボクシング漫画で登場し、多くの子供が飛びついた。
「無限大の負荷」というコピーは単に商品の性能が悪く、動きがスムーズでないだけの事だと小学生の僕でも理解するのに時間がかからなかった。
●ブルワーカー(15,000円くらい)
ひ弱でもてない男の子がブルワーカーを使ってトレーニング。見事彼女をゲットする4コマ漫画で僕らをあおった筋トレグッズの王様(現在でも売っていると思う)。
ひ弱な主人公がトレーニングをしながら「まったく簡単だ!」というセリフをいうんだけど、それに飛びついて購入。商品は良かったが、思うほか努力が必要なため、すぐさまお蔵入り。

ブルワーカー
●イーグルキャッチャー(2,500円くらい)
「りんごをつぶせる握力に!」の触れ込みで購入。届いた商品はただのスプリングでそれも強度が異様に低い。これじゃトレーニングにならんだろ、とすぐゴミに。(類似商品に「ダイナビー」という遠心力を利用した商品もあり。これも握力がつくという触れ込みだったが、努力が必要なのですぐ飽きた)
●真向法講座(価格は忘れた)
「2週間でオリンピック体操選手並みの柔軟性!」との触れ込み。が、柔軟体操のやり方を解説した冊子だった。(これにはやられた!同じく、身体鍛練講座というのもあった。これは、腕立てや腹筋のやり方がかいてあるだけの冊子で僕は絶望で泣きたくなった)
まだまだあるよ
●人体秘孔図(1,300円←なんて素晴らしい値段設定!小学生に安すぎず高すぎず。開発者はかなり頭がいいね)
「相手を一撃で撃破」とのことだが、人体のツボをイラストで解説しただけのもの。正中、だとかいってもねえ〜。それをどう打撃するかが知りたいのだよ。
●商品名は忘れた(16,800円)
「NASAで開発された無重力トレーニングマシーン」「地上の10倍の効果が!」
と会員DM(この辺のマーケティングテクニックもうまい)を見て購入。両足に金属製のアンクルを付けて、鉄棒に逆さからぶら下がってトレーニングをする。実際やってみたら、死ぬほどつらい!頭に血がのぼった状態で、小中学生がトレーニングなどできるわけないっちゅうの。
その他にも、「足が早くなるヒジサポーター」(実際は普通のサポーター)だとか、筋肉がつく薬(これは小麦粉みたいな味がしたな、気のせい?そういや、同時期に「体が柔らかくなる薬」も買ったな。筋肉の薬とパッケージは違うけど味は一緒だったような??)
電気で筋肉を刺激するマシーン(これは24,000円くらいしたね)にミスター高橋のチュービングトレーニング(これはゴムのチューブだけですね)そうそ、ブルースリーの通信教育も受けたね。テキストは香港の言葉で翻訳されたものは文章が難しくてまったく分からなかったね。
なぜかヌンチャクに、コシティ(インドやパキスタンのトレーニング道具)なんかも買った。ホントにそんなことしている暇とお金があれば、腹筋や腕立ての一回でもやってりゃいいのにね。
かつて、僕がこうした商品に費やしたお金は30万円くらいだ。それも、小学生から中学生の時期にだから今現在の貨幣価値(?使えるお金との相対)でいうと、数百万円は投資(?)をしただろう。
そんな中から僕は一つの結論を得た。「楽してできるものに本物はない(たぶん)」と。
僕はかつての自分を客観的に書いて笑っている。「ばかだなあ〜」と。それを読んでいるみなさんも笑う。(一部の人は、「俺と一緒だ」と冷や汗かいてるかもしれませんね。案外と多い、と思うけど)
けど、僕らが今現在生きていて、無意識に奇跡のようなものを求めていないだろうか?
「自分にだけ」
「ある日突然に」
「努力もそこそこに」
「ドラスティックに変化する」
そんなものを無意識に求めていないだろうか?
「誰でも楽々独立開業」「海外株投資で目指せセミリタイア」「資格をとれば一生安泰」などなど、資本主義では常に僕らの「楽したい」「無駄はしたくない」「理想の自分に近づきたい」という欲求を喚起するような情報に満ちている。
「そんなのはないんだよ」と痛い思いをしながら僕は子供の頃に学んだはずなのに、やはり時としてそんなものに飛びつきたくなってしまう。
けど、「そんなものは(たまにはあるかもしれないけど)ほとんどない」と自分の中で決めつけるだけで僕らをとりまく現実への接し方は大きく変わってくる、と思うのだ。
追記
これらの商品を開発していた会社の社長が10年以上前でしたかね、脱税でニュースになりました。竹やぶにお金を捨てた(隠した?)とかでだいぶ話題になりましたね。
!? ・・ってことは僕以外にも多くの人がやられているんでしょうね。
僕が体を鍛えるために腕立てや腹筋をはじめたのは高校の頃からでした。それにしても、なんであんなに強さに憧れたんだろ?一時は、空手で出家(?)をして修行しようと思ってたしね。
あのままいってたら、と考えると正直ゾッとします。